相続税課税状況の推移と基礎控除の変更
財務省が発表している統計によると、課税件数を死亡者数で割った課税割合、つまり相続税を納付しなければならなくなった割合は、平成25年で4.3%、被相続人1人当たりの課税価格は21,385.3万円、相続税額は2,823.5万円となっています。
相続税額を課税価格で割った率は13.2%です。
相続税の課税状況の推移(財務省HPより)
年 | 死亡者数 (a) |
課税件数 (b) |
(b)/(a) | 課税価格(億円) (c) |
納付税額(億円) (d) |
(d)/(c) |
---|---|---|---|---|---|---|
昭和58 | 740,038 | 39,534 | 5.3% | 50,021 | 7,153 | 14.3% |
昭和63 | 793,014 | 36,468 | 4.6% | 96,380 | 15,629 | 16.2% |
平成5 | 878,532 | 52,877 | 6.0% | 167,545 | 27,768 | 16.6% |
平成10 | 936,484 | 49,526 | 5.3% | 132,468 | 16,826 | 12.7% |
平成15 | 1,014,951 | 44,438 | 4.4% | 103,582 | 11,263 | 10.9% |
平成20 | 1,142,407 | 48,016 | 4.2% | 107,482 | 12,517 | 11.6% |
平成25 | 1,268,436 | 54,421 | 4.3% | 116,381 | 15,366 | 13.2% |
しかし、相続税が発生する比率は平成27年から上がることが見込まれています。
それは、平成25年度の税制改正で遺産に係る基礎控除の額が変更され、平成27年1月1日以降に発生した相続から適用となったからです。
改正前 基礎控除=5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
↓
改正後 基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、父Xが亡くなり、母Aと子Bおよび子Cが相続人の場合だと、基礎控除額が8,000万円から4,800万円と3,200万円も減ってしまいます。
この結果、相続税を納付しなければならない割合が6%に上昇するとの試算があります。
だとすれば、相続税の課税件数は4割近く増えることになります。
基礎控除の変更による影響
前述したように、相続税の基礎控除額は平成27年1月1日以降に発生した相続について変更されました。
この変更によって具体的にどの程度の影響があるのでしょうか。
【比較例】
相続人が配偶者と子2人で、法定相続分どおり(配偶者1/2、子各1/4)を相続し、配偶者軽減を受けた場合の相続税額(単位:万円)
課税価格 (億円) |
0.5 | 0.75 | 1.0 | 1.5 | 2.0 | 3.0 | 4.0 | 5.0 | 7.5 | 10 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
改正前(a) | 0 | 0 | 100 | 463 | 950 | 2,300 | 4,050 | 5,950 | 11,025 | 16,650 |
改製後(b | 10 | 144 | 315 | 748 | 1,350 | 2,860 | 4,610 | 6,555 | 11,995 | 17,810 |
増加分 (b)-(a) |
10 | 144 | 215 | 285 | 400 | 560 | 560 | 605 | 970 | 1,160 |
配偶者がいない場合で子2人が各1/2を相続した場合の相続税額(単位:万円)
課税価格 (億円) |
0.5 | 0.75 | 1.0 | 1.5 | 2.0 | 3.0 | 4.0 | 5.0 | 7.5 | 10 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
改正前(a) | 0 | 50 | 350 | 1,200 | 2,500 | 5,800 | 9,800 | 13,800 | 24,600 | 37,100 |
改製後(b | 80 | 395 | 770 | 1,840 | 3,340 | 6,920 | 10,920 | 15,210 | 27,000 | 39,500 |
増加分 (b)-(a) |
80 | 345 | 420 | 640 | 840 | 1,120 | 1,120 | 1,410 | 2,400 | 2,400 |
例えば、Xさんが2億円の相続財産をのこして死亡した場合、妻A、子B・Cの3人が法定相続分どおりに相続すると、相続税額は、改正前950万円に対して改正後1,350万円で400万円増となります(1次相続分、上段の表を参照)。
その後、妻Aが1次相続した財産を残したまま死亡し他に財産がなかったとしたら、Aさんの相続税の課税価格は1億円です。
その1億円を子B・Cが2人で各1/2相続した場合、相続税額は改正前350万円、改正後は770万円で420万円増となります。
1次・2次相続合計で、相続税額は820万円増の2,120万円となり63%増になります。